第一話 巻き戻る時間

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いや、それだけではない。空を飛ぶ鳥も、道路を走る車も、全てが写真の一場面の様に静止していた。 これは、一体・・・?良太郎は心の中で呟いた。自分でも分かる程頬が強張ってきている。しかし、それもつかの間、周りのものは再び動き出した。ホッと一息つく良太郎。きっと気のせいだったのだろう。だが、そう思う前に更なる衝撃に襲われた。全てが逆に動いているのだ。鳥も、車も、人々も、全てがビデオの巻き戻しの様に逆さまに動いている。良太郎は咄嗟に公園にある時計を見た。時計の針は猛烈なスピードで反対に回っている。急に地面が濡れてきた。そして雨粒が突き上げる様に空へと昇っていく。 間違い無い。時間が逆流している。でも何で・・・?地面から昇っていくという奇妙な雨の中、困惑する良太郎を目指し真っ直ぐに歩いてくる一人の男が良太郎の目に飛び込んできた。しかし雨の中なので誰だかはっきりとしない。あれは・・・侑斗?しかし侑斗にしては髪が黒過ぎる。近づいて来る男の髪は真っ黒である。では未来の良太郎の孫である幸太郎か?いや、それも無い。この事態に未来から幸太郎が駆け付けたのならば直接デンライナーで良太郎の前に姿を現すはずだからだ。
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