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「あんたなんか知らないからね!!勝手に泣いてろ!!」
リビングでワンワン泣く弟をほったらかして、私は扉をバンッ!!と強く閉めた。
ーーー5歳の弟と喧嘩をした。
いや、私が一方的に怒ったと言ったほうが正しいだろう。
「はぁ…なんでこうなるんだろ」
2階の自室のドアの前で一人ため息をつく。
部屋に入り、手に持っていた大学受験用のテキストを机に放り投げた。
左端から真ん中にかけてぐっしょり濡れているテキストからは弟にこぼされたコーヒーの匂いが微かに漂う。
私は本日二度目の溜め息をつきながら前髪をくしゃりとかき上げ、うつろげに天井を見上げた。
世間は今、大学受験で忙しい時期だ。
目まぐるしく過ぎてく時間。
次第に募る受験に対する焦りと不安。
自分でも知らないうちに気が滅入ってたのかしら…と考える。
普段なら気にならない弟の声が今日はやたらと耳に入った。
机に開かれたテキストやノート類を見て勉強しなきゃと思うのに全く集中出来ない。
『煩い』と叱っても反省しない弟にだんだん苛立ちを感じていた。
そしてーーー
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