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―――『カシャッ』―――
誰も居ないはずの教室でふいに聞こえたシャッター音。
顔を上げて音がした方向を見ると、一眼レフのごついカメラを構えた女が立っていた。
「ごめん。あまりにも綺麗な画になってたから」
謝っているわりには悪びれもなさそうに女はカメラを下ろす。
「勝手に撮っていいと思ってるわけ?」
「言ったら了解してくれた?」
「まさか」
俺は短いため息と共に女の方に向き直った。
短いショートカットの髪のせいか運動部のように見えるが、腕にはきちんと写真部の腕章がしてあった。
「やっぱり。泣いてたんだ」
女はケタケタと笑いながら近づき、覗きこむように俺の顔を見る。
そして自らの眼を指差しながら「涙拭いても眼が真っ赤」と言った。
「うるせぇな。つかお前誰だ?」
「3年の谷口 茉莉<タニグチマツリ>。一応君より先輩」
げっ…。年上。
同い年か年下だと思っていた俺は谷口から視線を外してすこぶる嫌な顔をする。
女は見た目で判断出来ないからややこしい。
「年下だとでも思った??」
ええ思いましたとも。
でも言わない。
「…黙ってるって事は図星でしょ」
あ、バレた。
谷口は視線を合わさない俺をよそに「もう!!失礼しちゃう。これでも気にしてんだからね」と独り言のように呟いた。
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