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俺はそれを見ながらやれやれと更に深いため息をつく。
「またため息ついてる。そんなんじゃ幸せ逃げるよ?」
「誰がそうさせてるんだ」
「あたしじゃないわよ」
「お前なー…」
呆れ半分に俺は目を向け、ふと女の持つカメラに止まった。
そういや写真撮られたんだよな。
しかも泣いてる瞬間の…。
うわっ、今更ながらすげー恥ずかしい。
「…ところでお前、その写真どうする気?」
「ほぇ?」
「ほぇ?じゃねぇよ。俺の泣き顔無断で撮っただろ」
そう言われてようやく意図を理解したのか谷口は「あぁ…」と納得したような声をだした。
「今度の写真コンテストに出そうかと思って」
…耳がおかしくなっただろうか。
とんでもない冗談が聞こえるぞ。
「…コンテスト?」
俺がそう聞き返せば谷口は「そ♪」と満面の笑みで頷いた。
「冗談じゃねぇ。今すぐネガ渡せ。それ燃やす」
そう言って俺は右手を出した。
…そんなものに出されたりなんかしたら全校生徒に泣き顔さらすようなもんだ。
絶対無理。
「何でよ。他の作品も入ってるのにっ!!」
「じゃあ現像すんな。泣き顔写真なんて嫌だし」
「あんな素敵な被写体出さなきゃ損する!!」
「知るかっ!!勝手に出すなっ!!肖像権で訴えるぞ!!」
この言い争い疲れる…。
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