音楽室で話そう

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歌い終わり、一志は手を挙げる。 「ハイ。聞いたことあったって人。知ってた人も。」 殆どの手が挙がる。 「…やっぱり音痴だって思った人。」 一志は手を挙げたままで生徒に手を降ろさせず小さな声で聞く。 質問が聞こえて堂々手を挙げたままの田上君をはじめとする男子に加え、後ろの席の一志の声が聞き取れなかった生徒が手を挙げたままだ。 「よし、三沢さん。よく引っ掛かってくれました。」 当てられた三沢さんは何の事か分からず周りの友達に助けを求めるように目を色々移す。 「さ。先生は何で音痴なんだろう?音痴なのに皆に音楽の授業していいのかな。先生は最近悩んでいます。励ましてくれませんか?」 「えっあの…。」 三沢さんは困って挙動不審。中々答えられないタイプだ。 「えー、じゃあ、ちなみに。ウチの奥さんは先生の歌は落ち着いていて好きだと言ってくれます。どうやら、この楽譜のおたまじゃくしが一列に並んでブレないことを優しい言い回しで言っているようですが。」 一志は楽譜を手に取り、音符を指差して説明する。 「先生。」 若林君が手を挙げた。ドキドキ…。 「ハイ。若林君。」 「確かに、先生の歌は音階が一定に近いです。更に強弱など無視しているので、先生の奥さんの言っていることは的確だと思います。それを落ち着いていると表現する先生の奥さんは優しい人だと思いました。しかし、授業中に生徒にノロケ話をするのはどうかと思います。」 「ハイ…ごめんなさい。」 「あはは!怒られた!」 田上君を中心として、先生が若林君に怒られたことにウケる。 「ハイ、じゃあ、三沢さん。今、若林君に注意され、ちょっと落ち込んだということを踏まえて、先生を励ましてください。お願いします。」 「あ…えっと…、先生の授業は楽しいと思います…。若林君は先生の奥さんは優しい人だと思うって…言ってて…私もそう思います。」 一志は微笑んで聞く。 三沢さんは、子供の頃の彼女に似ている。 「ハイ。ありがとう三沢さん。先生は救われました。それと、若林君、先生は注意されて聞き逃してしまいましたが、先生の奥さんを優しいと言ってくれていたんですね。ありがとうございます。」 一志にお礼を言われ、若林君は黙ってお辞儀をする。 武士っ! 一志は若林君にサムライ魂を見つける。 「さて、この、いつくしみ深きという歌ですが、これは讃美歌です。讃美歌と聞いて、どんなイメージがありますか。一言で。」
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