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一志は挙手を求めず指していく。
「夏川さん。」
「教会で歌う歌…?」
「牧原君。」
「キリスト教。」
「遠山君。」
「…えっと、あ、クリスマス。」
「蒼井さん。」
「キレイな歌。」
「おう。ん。橋本さん。」
「合唱…?」
「荘子君。」
「神様…。」
「欠端さん。」
「白いベレー帽とスモック。」
「あはは!」
一志だけがウケる。
「ん?ん。」
ドリフターズを思い出したのは一志ただ一人。
発言した欠端さんさえ、不思議そうに一志を見ている。
「えー。先生が今、ウケた理由を知りたい人は、周りの大人に、讃美歌のイメージ、白いベレー帽とスモックをキーワードに聞いてみてください。答えにたどり着かない場合は、更に白鳥、次に8時だよ。をキーワードに加えて聞いてみてください。」
世代だなぁと一志は染々する。
「先生…。」
若林君の手が挙がってしまう。
「ハイ…。」
「ね。」
とうとう、目で優しく注意される。
「ね。すいません。じゃ、若林君。讃美歌のイメージ。」
「伴奏が難しくないので今回、先生は気持ち軽く取り組めると思います。」
「そうなんです。でも皆には言わないで欲しかった…。決して手抜きじゃないんですよ?」
「分かってます。」
若林君はハッキリ言う。
ちゃんと何かを分かってくれているらしい。何なのか分からないが、何か心強い。
「ありがとう…。」
また若林君はキレイにお辞儀をする。
「さて、讃美歌とは、皆さんから出た通りです。先生の家はキリスト教でよく教会で歌わされたものです。ピアノを少しかじっているのもそこで習っていたからです。いつくしみ深きも、ひいたことがありますので、多分いつもより大丈夫です。若林君の言った通り難しくないので、ですし。正直、ヘヘって思っていました。」
「ヘヘじゃねぇよっ!」
田上君が強く突っ込む。
一志が思っている以上にキモかった様子。
「ごめんよ。」
ちょっと落ち込む。
「えー。このメロディにはいくつか歌詞があります。その一つがこの星の界。日本人が書いた歌詞です。先生もこの星の界を皆さんと同じ年に学校で習いました。結構気に入って真面目に歌っていたのを覚えていますが、皆さんがこの歌詞をどう捉え、感じるかは自由です。何も感じないというのも有りですので、後で感想文を書いて貰います。」
「えぇー!?」
一志の感想文発言にクラスが一体となって叫び、ざわつきブーイングが聞こえてくる。
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