音楽室で話そう

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一志は声を張り上げて生徒を黙らせる。 「いいですか。先生はチカンではありません。確かに大人になったら友達とは中々手を繋ぎません。皆さんに常識があってとても嬉しいです。ただ、先生は彼女が自分に好意を持っているということを感じ取った上でのチカン行為です。空気を読んだ上です。男子の皆さん。好きな子に手を出す時は相手の気持ちと、その場の空気を見極めることが大切です。」 「チカン行為認めた!」 「何教えてんの!」 更に騒がせることになる。 あぁ、もう…。 伝わって欲しいカタチで伝わらない…。 「や、分かった!ちゃんと意見を聞いてやる。ハイ、浅倉君。」 一志は出席番号頭から生徒を指す。 「え、はい?すいません。聞いてませんでした。」 マイペースっ! 「また絵を書いてたのね…。今先生ね、まだ付き合ってない女の子の手を握ったことで皆に非難を浴びているんだけれど、浅倉君はどう思いますか?」 「えー。先生も男だなと思います。good job。」 「…ありがとうございます。」 浅倉君は答えると直ぐに机に向かい、またノートに絵を描き始める。 「ハイ。浅倉君の意見に同じの人。」 一志は挙手で意見の主張を求める。 田上君と何人か男子が手を挙げる。 「待て田上君。あなた、さっき恥ずかしいって怒んなかったですか?先生、今少し理不尽な気分になったんだけど。」 「あ。すいません。恥ずかしい奴だなとは思ったけど、確かにgood jobです。」 恥ずかしいのは聞いてるのがじゃなくて俺がだったのか…。 「ハイ…じゃぁ、次、羽沢くん。」 手を挙げた生徒をとばして当てる。 「ハイ。先生は相手の気持ちと、その場の空気を読んだと言いましたが、それは確かなことでは無いと思います。キチンと告白をして合意を得た上で手を繋ぐべきだったと思います。」 「確かに…。相手の気持ちもその場の空気も確かなことではありません。先生の勘違いだったかもしれません。ただ、先生は彼女と結婚をしました。好きな人を手に入れるには多少の勘違いや思い込みが必要だと思います。どうでしょう。」 「…考えておきます。」 「ハイ。羽沢くんの意見に同じの人。」 残りの男子と、数人の女子が手を挙げる。 「ハイ。次は…若林君。」 呼んだ瞬間に肩が重くなる。 苦手意識…。もうここまで来ると体の反射。 「ハイ。僕は特に。悪いことだとも良いことだとも思いません。」若林君は真っ直ぐ堂々としている。
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