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夏川さんはうつむく。泣きそうな雰囲気。
「あ。チカン呼ばわりしたことを怒ってる訳じゃありませんから誤解しないで。」
「…ごめんなさい…。」
夏川さんは泣き出す。
「や、だから…。」
女の子って…泣くよね。
「先生も、もし。その教会でウチの奥さんの反対側の席の奴、そいつも友達でしたが、そいつが奥さんの手を握ったりしてたもんならチカン云々より、殴って警察に突き出したいと思います。」
「先生。」
「あ、ハイ。若林君。」
助け船に感じる。
「殴って警察に突き出したいと思うのは私的感情が働いていると思うし、殴ったら先生が警察に突き出されるので気を付けてください。」
「ハイ…気を付けます。ごめんなさい…。」
そして暫く静かになる。
皆、夏川さん待ち。
若林君…もう一言助けて…。
あぁ、面倒臭い。
「さて、夏川さん。んとー…。どう?言葉出そうに無い?」
極力優しく言葉を掛ける。
「すいません…。」
「うん…。ごめんね。泣かないでね。女の子泣かせると先生ウチ帰って息子と娘に怒られちゃう。」
何の話だっけ…。
あー…。分かんねぇ。
「じゃぁ…、友井さん。今、どう感じているか教えてください。」
「ハイ…。私は…、今…分かりません…。」
「ハイ。ありがとうございます。えーと、言葉が出ないことも、分からないってこともアリです。ただ、なぜ言葉が出ないのか、何が分からないのか、考えて頂ければと思います。」
一志は時計を見てどっと疲れる。
「あー…。ハイ。では、三沢さん。」
三沢さんはビクつく。
「えー、この分ですと、一度も歌わずに音楽の時間が終わりそうなのですが、歌った方がいいと思いますか?」
「え……。分かりません…。」
だよな…。
「あの…、質問はあります…。」
「え、ハイ。是非どうぞ。」
先生に驚かれ勧められると三沢さんは少し怖じ気付く。
「うん。質問お願いします。」
一志は三沢さんにゆっくり声を掛ける。
「…いつくしみ深き…は…、先生のお嫁さん…と…、想い出…で、子供の頃…歌った…より…、大きい…と思うのに…、星の界…ですか?」
「ハイ。そうですね。確かにいつくしみ深きの方が想い出深く、先生にとって存在は大きいです。でも星の界にもお嫁さんとの想い出があって、大きいですよ。」
星の界は…彼女より、彼女のお父さんって感じで大きい。
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