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年に二、三回見る程度だから確信はないけど、自信ある。
もし当たっているとしたら、私は帰ってきてしまったらしい。
どこに?
決まってる。
「……何で、神宮寺の館にいるの?」
そう、この広さ、この装飾、この空気、今は使われてない思い出のあるあの館ではなく、義兄さんが死んだ後別の場所に建てられた、二つ目の館だ。
帰って来いという連絡がなければ、絶対ここに来る事はないと断言できる、私の嫌いな場所だ。
私の疑問が込められた声は、夜の闇に吸い込まれた。
そして同時に、闇は意図的に消された。
パチンッ、とスイッチが切り替わる音が鳴り、部屋は明かりに包まれた。
突然の明暗の切り替わりに、私は思わず目を閉じる。
少しずつ光に目を慣らし、ゆっくりと辺りを見渡す。
少し離れた所に人の姿が見えた。
「お目覚めですかお嬢様?」
「……はい、寝心地の悪いベッドのせいで、最悪な気分ですけど」
隠す事なく刺を含めた私の言葉に、その人物は苦笑いを浮かべた。
女の人だった。身長は高く、執事のような服装をしていても、赤みがかかった長い髪を後ろでとめ、何よりその女性特有の体形と表情は女の人の物だ。
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