回顧録1~傷付け傷付く嘘つき灰かぶり~

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 視界が霞んでいる。  世界が、濡れていた。  べつに、雨が降っているわけではない。  ただ、泣いていたのだ。  目の前に広がっている、否定してしまいたい現実から目を背けるように、俯きながら。  自分がやった事を嘆き。  自分がもたらした事を悲しみ。  自分が作り出した罪に押し潰されて、慟哭していた。  「誰か……誰でもいいから  を助けて……」  そう、助けて欲しかった。でもその願いは叶わず、時間だけが経過していく。  このままじゃ心が堪えきれないと判断し、できる事をやろうと試みる。  溢れ出る涙を拭い、勇気を振り絞って前を――現実を直視する。  だが、瞬間的に、絶望した。  時間が経った事により、状況はさらに悪化したように見えた。  視界に入ったのは、頭から血を流し、そのせいでできた血溜まりに身を沈める、一人の少女。  近くには血が付着した大きな石が転がっており、少女はその石を頭にぶつけ、怪我をしたのだと推測できる。  しかし、そんなのどうでもよかった。  全ては結果なのだ。  そう、十年近く前の、よく晴れた日。  俺、冬谷蓮弥は、  人を殺した。  
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