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悲鳴が聞こえて、俺は飛び起きた。
そしてすぐに気付く。今の悲鳴は俺の口から出た物なのだと。
「ああくそ、久しぶりに見ちまった……」
かすれた声で、つぶやく。
本当に久しぶりだった。ずっと見てないものだから、もう克服したのだと思い込めるくらい。
ここ約十年間、一週間に一回は必ず見るあの夢に悩まされていた。
だが、高校に入学してからは、正真正銘まったく見なかった。
だから安心していた。故のさっきの悲鳴。
俺は深呼吸して、心を落ち着かせようとする。それから何でまたあの夢を見たのか、その理由を考え始める。
「……やっぱり、寝苦しかったからか……?」
それくらいしか思い浮かばない。昨夜は暑かったから、この仮説は結構いい線行ってると思う。
そこまで考えて、俺はため息をついた。これじゃあ夏は、毎日のように見るかもしれないじゃないか。
実家は部屋にクーラーがついていたが、当然今俺が借りている部屋に、そんな素敵設備は存在しない。
「……まあ慣れる事はできないけど、こればかりはしょうがないよな……」
いや、慣れる事はできない、じゃない。慣れてはいけないのだ。
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