回顧録2~少女が次に奏でるその唄は~

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 包み込むように柔らかい、寝ているだけで安心感漂う布団に身を沈めていた私は。  逆に違和感を感じて、目を覚ました。  そこで気付く。私は私の部屋と違う場所にいた。  「……え?」  思わず声が漏れる。しかたがないと思う。起きたら別の場所だったら、最初に連想するのは普通誘拐だ。  でも、それだとおかしい。誘拐されたら普通、こんな所で眠らされていない。おそらく地べたに転がされているだろう。  それに、寝てる最中に起きた覚えもない。ピッキング防止された部屋の鍵はちゃんとかけたはずだから、誘拐されたとしたら強行手段だ。大きい音も相当鳴ったに違いない。  でも、そんな記憶はない。  じゃあ、何で私はこんな所にいるんだろう。  私は上体を起こす。私が眠っていたのは、アニメのお嬢様が使っているような、日よけのカーテンまでついてる巨大なベッドだった。  朝はまだ来てないらしく、部屋は暗い。それでも雲はないようだ。カーテンの隙間から溢れ出る月明かりが、部屋を淡く照らしている。  ベッドを覆う薄いカーテン越しに見える部屋は、一般の家のリビングくらいの広さを持っていた。  ……この光景、見た覚えがある。
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