300人が本棚に入れています
本棚に追加
/311ページ
俺と緋凪の時間が止まった。もといそう錯覚した。それの原因に気付かない雪は、ニッコリ笑いながら首を傾げている。
俺もニッコリと、それはもう満面の笑みを浮かべて、緋凪を見つめる。
最初はびくびくとしていた緋凪だが、いつまでも笑っている俺に安心してか、ホッと胸を撫で下ろした。怒ってないと察したのだろう。
「その油断が命取りだあぁぁぁぁああああ!!」
「キャアアァァァ!!時間差は卑怯だよぉぉぉぉおぅ!!」
ドンガラガッシャン!と朝食が並べられたテーブルを避けながらの乱闘が始まる。その間も、雪は楽しそうに笑っていた。
雪こと冬谷雪菜(ふゆたに せつな)は、簡単にだがさっきも説明したように俺の妹だ。ちゃんと血も繋がっている。
彼女の年齢は俺の一つ下。絶賛受験中の中学三年生だ。もちろん一人暮らしはせず、実家に暮らしている。例えここから実家まで十五分で行けても、俺は帰る気なんてまったくないから、お盆や正月を除いたら、彼女に会う気ももちろんなかった。
だから、この再会はとてつもなく予想外であり、不本意だ。
一通り乱闘した後、緋凪に武器(辞書)を持ち出され劣勢を強いられた俺は、雪に向き直った。
最初のコメントを投稿しよう!