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思わずため息をついてしまう。自分から遠ざかったのに、わざわざ家に拉致されるとは。
……まあ、一週間の辛抱だ。戻ったらできるだけ目立たないよう過ごしていこう。
そうひそかに決心してから、私は蒼火さんに向かって手を伸ばした。
「何でしょう?」
「複製キーをください。もう必要ないでしょう?」
「はい、ですがお嬢様、私がお返ししても、念のためにと新たな複製キーが作られるかと」
言外に鍵を取っても無駄だと言われ、私は少しだけ腹がたった。
「なら作るのやめてください。他人が鍵持ってるの、何だか怖いです」
「それを決めるのは、私ではなく旦那様なので……」
「……もういいですっ。寝直すので出て行ってくださいっ」
はい、と頭を下げながら返事をして、蒼火さんはドア付近のスイッチを消す。
再び暗くなる部屋。
「それではお嬢様、よい夢を――」
そう言い残して、彼女は部屋を出て行った。
残された私は、起こしていた上体を倒す。
暗闇の中、帰ってきてしまったという事実だけしか、考えられない。
本当に一週間、ここで過ごせるだろうかという疑問も出てきた。
そんな事をずっと考えていた私は、やがて眠りに落ちていった。
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