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蒼火さんが心配そうに訊いてくるが、とんでもない。ほとんど甘い物しか食べない私でも、まずいどころかおいしいとわかる。
ならどうして?という蒼火さんの質問に、私は答えていいものかと迷いながらも、できるだけ呆れた風に聞こえないよう意識して言った。
「蒼火さん、さっきから料理に視線がくぎづけです」
明らかに驚きで目を見開いた蒼火さんを無視して、私は続ける。
「それに何度も口元を拭いてるでしょ?よだれを拭いてると私は推測しますが、もし本当なら、それほどわかりやすい『食べたい』という意思表示はありませんね」
しまったと思わず声を漏らす蒼火さん。珍しくノリに乗った私は、あくまで予想だけど、当たってるとどこから来てるかもわからない確信を持って、追い撃ちをかける。
「それと、普通の口調で話したいんでしょう?私は気にしないので、どうぞしゃべりやすい口調で話してください」
それをとどめに、蒼火さんはついにうなだれた。
「――――それにしても、ホントよくわかったわね」
「……何がですか?」
蒼火さんは遠慮なく私の目の前の皿から料理を口に運びつつ、問いに答える。
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