回顧録2~少女が次に奏でるその唄は~

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 その前に帰ったのはお盆だし、あなたよっぽどここが嫌なのね、という蒼火さんの言葉を、私は軽く聞き流した。  私が正月に戻って来た事を何故知っているのか。どうせ義父さんか義母さんが教えたんだろうから、訊かないし気になりもしない。それよりも気になる事が、二つある。  一つは二人が蒼火さんに、どの程度私について教えたのかという事。  そしてもう一つが、何故彼女に教える必要があったのかという事だ。  子供の世話をするわけじゃない。好き嫌いや性格はともかく、前回帰ってきた日なんて細かい事を教える必要性は、まったくもってない。  なら何故、と思うけど、もしかしたら会話の中で知っただけかもしれないし、そもそも私の考え過ぎとも考えられる。  だから、私は違う事を訊いた。  「自宅謹慎なんですから、屋敷の中ならどこをうろついてもいいんですよね」  「ええ、いいんじゃない?奥様にも旦那様にも、うろちょろさせるなって言われてないし」  それなら話が早い。館の書庫で本を読んで時間を潰せる。  そのまま書庫へ行こうと立ち上がった私に、蒼火さんは制止をかける。
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