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「何ですか?」
「いや大した事じゃないわ。食器を洗うのにキッチンにいるから、何かあったら声かけてちょうだいってだけ。――ああ、あと一つ」
蒼火さんはうっすらと不気味な笑みを浮かべ、
「書庫に行くなら、”唄う女の子”に気を付けてね」
そう言った。
”唄う女の子”とは、一体何なのか。
本を読む私の頭の中で、そんな疑問がぐるぐると回っている。
もちろんその場で訊いた。でも蒼火さんは笑みを浮かべるだけで、何も教えてくれなかった。
意図的に教えてくれなかったという事は、必ず理由があるという事だ。けど、今は”唄う女の子”の方が気になる。
今現在私がいる書庫に、もちろん”唄う女の子”はいない。そもそも館自体に私と蒼火さんしかいないらしいし、いるはずがない。
となると、何かの作品名(そんな感じの名前だし)かと思ったけど、書庫には絵画も銅像もない。
書庫なんだから本の題名の方とも考えられる。でも少なくとも、そんな名前の本を私は聞いた事がない。
なら、何なのか。この館に帰ってきてからわからない事だらけだけど、同時に何度も疑問を解いている。
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