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「それで?何でわざわざ俺の部屋に忍び込んだうえ、心臓に悪い事をした?」
緋凪が心臓に悪い事?と首を傾げていたが、説明したくないのでスルーする。
俺の問いに雪は少し考えた後、ぽつりぽつりと思い付いた事を、理由というより言い訳を口に出しているように、言葉を並べて行く。
「理由は……ないよ?兄妹が会うのに理由はいらないと思うし。
で、ねえさんの言う通りにして侵入したんだけど、兄さん寝てるからやることなくて。
起こしてもよかったんだけど、兄さんの寝顔が可愛かったから、そのままずっと見てたの。その内眠くなっちゃって……」
ニコニコしながら説明してるその姿は、まあ可愛くはあるのだが、何しろ言ってる内容が内容だ。就寝中ずっと見られてたと知って、背筋に悪寒のような物が走った。
「……なんか部屋の温度が下がった気がするよ」
緋凪が長袖に包まれた自分の細い腕を摩る。
「なあ、来る時間を考える余裕はなかったのか?」
せめて朝早くなら、いや普通に訪問してくれたなら、少なくともこんな恐怖を味わう事はなかっただろう。
「でも、早く会いたかったんだよ」
……俺達が普通の関係なら、どれだけうれしかった事か。
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