回顧録2~少女が次に奏でるその唄は~

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 お腹が空きませんか?  蒼火さんにそう言われ、混乱した私は頷く事しかできなかった。  ここで待っててと言い残して蒼火さんが書庫を出て行ってから、そろそろ五分くらい経つ。  ようやく思考力が戻ってきた頭で、私はさっき起きた事を思い出しつつ、考える。  ”唄う女の子”とは何か作品の題名ではなく、そのままの意味だった。白い靄の中、踊りながら唄を歌う少女。  正体はわからない。何故か懐かしい感じがするけど、あんな女の子に会った事はない。  じゃあ、別の意味での正体は何だろう……?  再び襲って来そうな恐怖を、私は頭を振って振り払った。ダメだ、こんな所(ゆうれいがでてきたばしょ)で一人こんな事考えてちゃダメだ。  ……そう、逆に考えてみよう。つまり”女の子は幽霊ではない”。  だいたい、この館に幽霊が出てくる事自体怪しい。廊下で唄を歌っているというのも妙だ。  なら正体は何なのか、という疑問が残るけど、気分が晴れた私にとって今はどうでもよかった。下手に考えてまた怖くなるのも嫌だし。  しばらくして、五種類のアイスを持って蒼火さんが帰ってきた。
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