回顧録2~少女が次に奏でるその唄は~

19/92
前へ
/311ページ
次へ
 でも、柳に風。暖簾に腕押し。余裕を含んだ蒼火さんの笑みは、それだけじゃ崩れない。  「ねえ、お嬢様」  手に持つスプーンを私に向けて、蒼火さんは言った。  「あの二人に会いたいですか?」  私はすぐに頷く事ができなかった。  質問の意味はわかる。でも意図がわからない。私が正直にうんと頷いて、館から出してくれるとは思えない。  じゃあ何のための問いなのか。ただの好奇心?いやこのタイミングで意味のない問いとは考えにくい。  意図を知るためには、何らかの行動を起こさないとダメらしい。  散々考えた末、私は黙って頷いた。  予想通りの反応だ、とでも言うように、蒼火さんは一層口元を吊り上げた。  「じゃあお嬢様、ゲームをしましょう」  「ゲーム?」  ええ、と蒼火さんは応える。  「さっきお嬢様は”唄う女の子”を見た、とおっしゃいましたよね?」  私は頷きつつ、一度忘れていた出来事を思い出す。  「はい、それらしきものは確かに見ました」  「なら、これからこの館で、様々な事が起きるでしょう。お嬢様はその犯人の正体を推理する。当たれば貴女の勝ち。外れれば私の勝ちです」
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!

300人が本棚に入れています
本棚に追加