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でも、柳に風。暖簾に腕押し。余裕を含んだ蒼火さんの笑みは、それだけじゃ崩れない。
「ねえ、お嬢様」
手に持つスプーンを私に向けて、蒼火さんは言った。
「あの二人に会いたいですか?」
私はすぐに頷く事ができなかった。
質問の意味はわかる。でも意図がわからない。私が正直にうんと頷いて、館から出してくれるとは思えない。
じゃあ何のための問いなのか。ただの好奇心?いやこのタイミングで意味のない問いとは考えにくい。
意図を知るためには、何らかの行動を起こさないとダメらしい。
散々考えた末、私は黙って頷いた。
予想通りの反応だ、とでも言うように、蒼火さんは一層口元を吊り上げた。
「じゃあお嬢様、ゲームをしましょう」
「ゲーム?」
ええ、と蒼火さんは応える。
「さっきお嬢様は”唄う女の子”を見た、とおっしゃいましたよね?」
私は頷きつつ、一度忘れていた出来事を思い出す。
「はい、それらしきものは確かに見ました」
「なら、これからこの館で、様々な事が起きるでしょう。お嬢様はその犯人の正体を推理する。当たれば貴女の勝ち。外れれば私の勝ちです」
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