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思えば、私は逃げてばかりだった。
義兄さんが死んだ当時の文芸部員を殺さなかったのは、私は憎しみはあっても殺意がなかったから、そして年月が経ったからだと解釈していた。
だけどもしかしたら、人を殺したくないと逃げていたのかもしれない。
それが当たり前の反応なのはわかってる。けど同時に、義兄さんを殺した部員達を殺したいくらい憎んでいたのも確かなのだ。
もちろん今は、逃げた事が最善だったと思ってる。思えてる。
でも今は、逃げる事が最善だとは到底思えない。
私の馬鹿な気持ちがこもった謎に、臆する事なく立ち向かった二人のように。
神宮寺の、私を後継ぎにするという意志がこもったゲームに、逃げずに勝利する事が今すべき最善の行為だと信じてるから。
「……そうですか。ゲーム参加を決意していただき、私はうれしい限りです」
そう言った蒼火さんの浮かべる笑みが、一瞬心から浮かべたものにかわった。
「さて、じゃあチャッチャとルールを説明しましょうか」
蒼火さんの口調が、また唐突にかわる。
「ルール?さっき言ってたのじゃないんですか?」
「あれはただの勝利条件でしょ?今から話すのは細かいルールよ」
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