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「……ていうか、時間とか訪問方法とかまったく考えずに俺の所に来る、その本当の理由は何だ?」
会いたいというだけなら、考える余裕がなくなる事はない。となると、何か会いたくなる理由が存在すると考えた方が自然だ。
「兄さんにはお見通しみたいだね。でも、その理由がわからないというのが、残念だな……」
そう言って、本当に残念そうに雪は目を伏せた。
その大袈裟なリアクションが、俺をイライラさせる。
「ああ残念だ。だから早く話せ」
いつもとは違う刺々しい俺の言葉に、横にいる緋凪は目を見開いて驚いていた。当然だ、俺が驚いてるくらいなんだから。
雪は俺と話すのが久しぶりなせいか、大して気にしてない風に口を開いた。
「今日、私の誕生日」
え?という緋凪の疑問が含まれた声が、やけに遠く聞こえた。
その時俺は、一瞬呼吸が止まったのに気付き。
同時に、脈拍が、心臓の鼓動が、どんどん早くなっていくのを感じた。
「ああ…………」
何とか出した声は、かすれていた。
「もうその日か……」
「うん、だからね、誕生日プレゼント買ってもらいたいなって思ったの」
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