300人が本棚に入れています
本棚に追加
「質問はありません。でも要求はあります」
「はあ、一応聞くけどその要求は通らないと思うわよ?」
蒼火さんは一旦言葉を切って、
「それって、神宮寺は二度と後継者の話をしてくるなって言うんでしょ?」
本当に読まれてたらしい。私の頬を冷たい汗が流れる。
私が黙って頷くと、蒼火さんは腕を組んで何やら考え始めた。雇われてる側が勝手に決めていいレベルの話ではないから、それなりに返答に困るのだろう。
「……私個人じゃ決められないから、旦那様に話す事になるけど、当然要求を呑むかはわからない。それでもいいなら話しておくけど?」
「十分です。それくらいの要求を呑む事ができないなら、義父さんもその程度の人間だったと証明されるだけですから」
手厳しいね、と蒼火さんが苦笑する。
「さて、用件は全て片付いたし、早速始めましょう。――あら」
蒼火さんの視線が下を向く。先にあるのは私のと蒼火さんのを含めた五つのアイス。だけどそれらは、一つの残らず形を崩していた。話しに集中している内に溶けてしまったらしい。
蒼火さんはため息混じりに食べたかったなと漏らしながら、溶けたアイスのカップをトレイの上に乗せる。
最初のコメントを投稿しよう!