300人が本棚に入れています
本棚に追加
「さてと、私はこれ片付けるのにキッチンに戻るから、用があったら直接来るか、大声出して呼ぶか、部屋に付いてる電話で連絡ちょうだい。あ、その電話は館内のみしか繋がらないから」
何故か一番便利な方法を最後に提示し、扉まで足音なく歩き、ドアノブに手をかける。
「じゃ、このアイスのように謎も易々と解ける事を、心から祈ってるわ、お嬢様」
そんな大して上手くもない言葉を残して、蒼火さんは去って行った。
戻ってきた、書架の静けさ。柱時計の時を刻む音が、やけに大きく聞こえる。
さっきまでの話が夢のように思えてくる雰囲気は、同時に私にさっきの話が紛れも無い事実だと再確認させる。
「――――て、ここでぼーっとしてるわけにもいきませんよね……」
よしっ、と気合いを入れて、私は椅子から立ち上がった。
今やるべき事は単純だ。今遭遇した唯一の”女の子”の正体、またどうやって現れ消えたのか、その方法を調べ推理する事だ。
でもそれは、単純でも簡単じゃない。私は緋凪さんみたいに推理なんてした事ないから、さっきの光景を見て少し気になったとか、ちょっと調べて、はいわかったというわけにはいかない。
最初のコメントを投稿しよう!