300人が本棚に入れています
本棚に追加
近付くにつれ、次第に露になっていく赤い模様。それは複数あり、横に列を並べていた。
そして私は、足を止める。
最近春も半ばを迎え、暑い日もたまにあり、今日はどちらかというとその日に該当するにも関わらず、少し肌寒い。
……少しだけ、呼吸が苦しく感じた。
さっきあんな事があったからだろうか。
いや、理由は他にある。
紛れも無く、私の目の前に。
模様の正体は、文字だった。赤いスプレーで書かれた、不格好な文字の羅列。
最初に私が見たのは、アルファベットのKだった。その次にa、o、s、uと続いている。
「か、お、す。”混沌”ですか。ふふ、これを書いた人は、私と同じような人間なんでしょうね」
過去に私も、壁に巨大なメッセージを赤いペンキで書き殴った事がある。
書き記すという事は、残したい、伝えたい、もしくは教えたいという事だ。
さしずめ、これは”唄う女の子”からのメッセージなのだろう。
とにもかくにも、私は新たな謎に遭遇してしまったらしい。
「壁にメッセージとは……これは私への挑戦状と見ました」
いいでしょう、絶対解いてやります!
決意を新たに、私は調査を開始する。
最初のコメントを投稿しよう!