回顧録2~少女が次に奏でるその唄は~

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 近付くにつれ、次第に露になっていく赤い模様。それは複数あり、横に列を並べていた。  そして私は、足を止める。  最近春も半ばを迎え、暑い日もたまにあり、今日はどちらかというとその日に該当するにも関わらず、少し肌寒い。  ……少しだけ、呼吸が苦しく感じた。  さっきあんな事があったからだろうか。  いや、理由は他にある。  紛れも無く、私の目の前に。  模様の正体は、文字だった。赤いスプレーで書かれた、不格好な文字の羅列。  最初に私が見たのは、アルファベットのKだった。その次にa、o、s、uと続いている。  「か、お、す。”混沌”ですか。ふふ、これを書いた人は、私と同じような人間なんでしょうね」  過去に私も、壁に巨大なメッセージを赤いペンキで書き殴った事がある。  書き記すという事は、残したい、伝えたい、もしくは教えたいという事だ。  さしずめ、これは”唄う女の子”からのメッセージなのだろう。  とにもかくにも、私は新たな謎に遭遇してしまったらしい。  「壁にメッセージとは……これは私への挑戦状と見ました」  いいでしょう、絶対解いてやります!  決意を新たに、私は調査を開始する。
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