回顧録2~少女が次に奏でるその唄は~

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 カーテンに遮られた日の光の代わりに廊下を照らしていたのは、蝋燭に点された淡い火だった。それが扉と同様、点々と均等に壁に付けられた鉄皿の上でその存在を小さく主張している。  この洋館、ちゃんと現代の科学技術が生み出した物があるにも拘わらず、こういった無駄な物もまた多い。  例えばボタンを押せば掛かる普通の電話の隣に、何故かコードも繋いでない黒電話が置いてあったりする。ちなみに前回ここに来た時、この廊下は電気で照らされていた。  まあ今はそんな事は気にならない。むしろ慣れてしまった感がある。  今気になるのは、何故昼間にも関わらず、カーテンが締め切られ蝋燭に火が点されているのかという事だ。  「それと……」  私の視線は、Kaosuと書かれた壁にある蝋燭に向けられる。  「……何で火が点いてないんでしょう?」  そう、何故か赤い文字辺りにある蝋燭には、火が点されてないのだ。  消えてる中の一本の近くまで行き、背伸びをしてよく見ると、紐の先が少し焦げてる。つまり一度は火が点いていたという事になる。  他のも見てみるけどみんな同じで、点いてるのと長さはほとんど変わらない。
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