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目を開けると、真っ赤だった。
目の前も、自分の手も、横にいる見慣れたその人も。
涙が、血のついた頬を伝い、血のついた手に落ちる。
左側にいたその人が、血の気の引いた、細かく震える唇で私に向かって話す。
「話さなくていい」
毎回そう思うのに、言葉にはなってくれない。
その人はやっと口を開いて、小さな声で
「生きて」
と言った。
本当は、あなたが生きるべきなのに。
留まろうとする意思に反して、私は走り出す。
その人は最期まで笑っていた。
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