2/2
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
 目を開けると、真っ赤だった。  目の前も、自分の手も、横にいる見慣れたその人も。  涙が、血のついた頬を伝い、血のついた手に落ちる。  左側にいたその人が、血の気の引いた、細かく震える唇で私に向かって話す。 「話さなくていい」  毎回そう思うのに、言葉にはなってくれない。  その人はやっと口を開いて、小さな声で 「生きて」  と言った。  本当は、あなたが生きるべきなのに。  留まろうとする意思に反して、私は走り出す。  その人は最期まで笑っていた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!