3/8
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
 とある城下町の隅に、小さな村がありました。  そこの外れにある森の中の川のほとりで少女が一人、自分の手を、腕を、洗っていました。  この辺りの地域では珍しい銀色の髪は、肩の上で無造作に切られていて、その上から更にバンダナの様なものをまいていました。  その下の少しつり目な瞳は、綺麗な緋色でした。  その長身で細身の少女は、ここから数十キロほど離れた山向こうの地域の服を着ていて、それはぼろぼろでした。  土で汚れたその服には目もくれず、少女はひたすら川の水で手を、腕を、洗い続けます。  腕は既に洗いすぎで赤くなっていて、それに気付いた少女は少し驚いた様子で洗うのを止めました。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!