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しばらく車を走らせた頃、河田が口を開いた。
「実は、黒羽さん(紗耶)と話したくて…今日は準夜だったから、あそこで待ってたら会えると思って待ってたんです。」
(えっ?飲み会から帰宅後に、勤務が終わる時間を見計らって待ってたってこと?)
今の彼女なら、(えっ?何で?怖いんだけどなどなど)その男に疑心感を抱くに違いない。
でも、その時の彼女は違っていた。
(私に会うために、ずっと待っててくれてたのか…)
疑いを知らない人間は恐ろしい。
辺りは真っ暗、車に差し込む薄明かりでは相手の顔を判別することはできなかった。
暗闇は、思いがけないモノを与えるものだ。
甘~い言葉のひとつひとつが、何故か可愛らしく感じられ、その言葉の中に引き込まれそうになる。
この時、彼女が秘かに付き合っていた彼氏とうまくいっていたら、この後に過ごす時間は変わらずにすんだのかもしれない。
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