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あたしが何も言えないでいると、ただでさえどんよりとした空気がさらに重みを増した。
「…分かった」
本当の別れの理由はうすうす感じてはいる。
完全な心移り。
確かにあたしはがさつで可愛げがない。
頑固な意地っ張り。
チャ~チャラララ~…
彼の着信音が鳴る。
テーブルの上に置きっぱなしだった彼の青いケータイを彼より先に乱暴につかみ、
開いて待ちうけを見た。
電話だ。
その相手の名前は『桃子』と表示されていた。
丁寧にコールされると同時に桃子の可愛らしく映った写メまで表示される。
あたしは怒りまかせに通話ボタンを押し、目の前の彼に怒鳴った。
「浮気するような彼氏にひっかかっていたなんて! あたしも馬鹿ね! こんなサイテーな男と別れられて良かったわ! 桃子!! 浩志!! 裏切ってくれてどうもありがとう!!」
叫び終わったあたしは電源ボタンも押さぬまま彼にケータイを投げつける。
「じゃあね!! さようなら!!」
その夜、泣き続けたのは言うまでもない。
天邪鬼なあたしの恋は最悪な形で終わった。
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