第零章

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   何とか言えよ! と男の子に向かって喚き散らす茶髪の大男。いやいや、あなたが口にシャツ突っ込んじゃったから喋るに喋れないんだってば。頭悪いのかな。もごもご言ってるじゃんその子。 「はっ。もう、いいよ。何もかも……。……っ、テメェら! この際風紀の奴らぶっ飛ばすぞ! どうせ退学は免れねえんだ!」  どうしてこうなった。  何やら自嘲していた大男だったが、途端に周囲の四人を従えて躍り掛かってきたわけです。その手には図書準備室のどこにそんな物が有ったのかと思わず尋ねたくなる、錆び付いた長い鉄パイプ。そんな物を室内で振り回してはいけません。 「暴れられるとなると僕の管轄外ですね。お願いします」 「分かった。黙らせた方が手っ取り早いな」  割と本気で不機嫌! 目が笑ってないです朔夜さん! 「死ねえええ!」 「悪いが後五十年は生きたいのでな。お前が死ね」 「ぎゃぶ!」  一人沈没。どさくさに紛れて死ねって言いましたね朔夜さん。  コイツら本当に頭悪いな。僕ならまだしも朔夜なんて、どう考えても「武術ですか? それなりに嗜んでます」って顔立ちしてるじゃない。鉄パイプを振りかぶって突進してきた大男は、鳩尾への掌底一発であえなく沈黙。相変わらず華麗である。  
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