第二章

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   由緒正しき神薙木の人間であると同時に彼はご覧の通りのルックスであった為、街を歩けば逆ナンされない日はないし、それはもうイケてる日々を送ってきた。だから彼は自分をイケてると自負していた。彼は慢心も謙遜も嫌いなのだ。  マジムカつく。  それが帝の現在の心境である。馬鹿みたいに広い生徒会室で、これまた馬鹿みたいに豪華な装飾が施されたデスクに肘を付き、眉間にがっつり皺を寄せて虚空を睨み付けていた。熱心なファンが見たら赤面してぶっ倒れちゃうかもしれないひどく蠱惑的な表情である。 「みかどー、いい加減その皺なんとかするんだぞ」 「煩い。俺は今猛烈に憤慨しているんだ」  ああ! マジムカつく!  思い出すだけで頭に来る。腹を蹴ったアイツも、アイツの蹴りを綺麗にくらってしまった自分もムカつく。ムカつくあまり手元のプリントに二回もサインしてしまった。ヤバい。  そしてそんな生徒会長を見る副会長、南悠歩の目はやれやれといった雰囲気を色濃く映し出していた。それがまた、気に入らない。なんだその目。お前のお気に入りだっていうからわざわざ見に行ってやったというのに、どうして蹴られなければならない。腑に落ちんぞ。 「まったく、あれはどう考えてもみかどが悪かったんだぞ。僕だっていきなりあんなことされたら怒るのだ」  
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