第一章

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  「転入生を迎えに。風紀委員として、です」 「みなとも? うわぁ、奇遇だぞ! 僕も転入生のこと待ってる所だったんだぞ!」  しつこ過ぎるくらいの語尾。だがそこがイイ。アニマルヒーリングってのは案外人間が相手でも働いたりするのかも知れないなと認識を改めた所で、やはり身ぐるみ剥がして以下略という物騒な考えが過ってしまい頭を振った。 「うむー、何だかおなかすいたんだぞ……。みなと! 何か食べ物無い?」 「飴玉が一つだけなら……」 「頂戴致すでゴザル。ありがとみなとー!」  放り込まれた飴玉のせいで右の頬っぺたが膨らんで、丁度リスとかハムスターを彷彿とさせる。前世は小動物で間違いなさそうである。  ……まぁ、ね。とりあえず王道の副会長と転入生のあれこれは望めそうにないが、むしろ副会長が転入生を落として受け溺愛ヘタレ×鈍感無邪気とか割とおいしい構図じゃないかと思うし。路線を変更していこう。それが良い。 「うっわぁ、でっけぇな! まんまお城じゃん!」  暫く先輩がむぎゅむぎゅやっているのを眺めていたが、声のニュアンスとしてはキラキラとかウキウキとか、そういう無邪気さを全面的に押し出した感じの少年声がどこからか響いて来て、思わず肩が跳ねた。漸くおいでなすったか。  
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