第一章

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  「ほ、ら! 二人とも行きますよってば!」 「みなとのけちー!」 「右に同じだぞー!」  漸く二匹を連れ(半ば引き摺るようにして)て食堂を出た時には、腕時計は十一時を指し示していた。おかしいな、社君と合流した時にはまだ九時だったのに。いったいどういうことなの。  あれ? いつから僕はこんなギャグキャラみたくなったんだろう?    ★ ★ ★ 「あ゛ー」 「……どうした湊。かなり素に近いようだが」  現在の時刻は手元の腕時計によると午後一時半。少し遅めのランチタイムは軽めにサンドイッチで、なんてどこかのOLみたいな僕です。朔夜を引っ捕らえて授業を抜け出して来ました。教室を出る際に黄色い悲鳴じみた叫び声が聞こえたけど気にしない。朔夜が動くといつもこうだ。もう慣れた。 「いえ、ちょっとストレスが酷くて。胃に穴が開きそうです。むしろ胃が無くなりそう」 「午前中に何があったんだ……」  黙って着いてきてくれる朔夜は間違いなくいい人である。鬼畜眼鏡キャラ強要してごめん。 「転入生のことですよ」 「何かあったのか?」 「いえ、何も無かったんですけど。何も無かったから僕がこんな有り様なわけでして」  萌えイベントの一つでもあれば元気百倍なのだが、午前中は特筆すべきイベントも無く。二匹のお守りばかりしていた為こんな感じになってしまった。  
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