第一章

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   僕の記憶が正しければ確か話し掛けられたのは僕と朔夜だった筈なのだが、まぁいい。 「アキ、どした? 何だよ急に。ごめんな湊、何かアキ不機嫌みたいで」  不機嫌の原因はあなたですけどね。天然受けおいしいです。  黒瀬君は学年でも、と言うより学園でも有名で、喧嘩が驚くほど強いらしい。天下無双らしい。天下無双は言い過ぎにしても、学園内ではそれにかなり近いらしい。……と、僕の頼りない脳ミソが照合結果を告げているのだが、黒瀬君の雰囲気も考慮に加えるとほぼ間違いないと思われる。 「……黒瀬暁臣。お前は俺に何度服装を正せと言わせたら気が済むんだ。もう両手両足では足りない程には注意してきた筈だが?」 「あ? 誰がテメェの言うことなんざ聞くかよ。確かに耳にタコ出来るくらい聞かされてるが、直すつもりは更々ねぇな」 「言葉が理解出来ないわけではなさそうだな。あれは嫌だこれは嫌だと子供のような奴だ」 「……喧嘩売ってんのかテメェ」  髪もそうだが黒瀬君の服装というのがまた風紀的にはよろしくなくて、彼はブレザーを羽織らずに黒地にに金のラインが入ったパーカーをフードまでがっつり被って着ていて、スラックスにはチェーンがそれはもうじゃらじゃらと。耳には大きなピアスが沢山。カッターシャツは胸元がざっくり開くくらいまでボタンが外してあって、色気むんむんの鎖骨周辺にはこれまたじゃらじゃらとアクセサリーの数々。重くないのかな、あれ。  
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