第一章

24/49
前へ
/220ページ
次へ
  「湊はな、今朝学園内を案内して回ってくれたんだよ」  僕の代わりに社君が答えてくれた。ありがたい。凄い目をしている黒瀬君にちょっとビビってしまっている為、口を開いたら確実に噛んでしまうだろうから。敬語キャラは日常会話を流暢に行わなくてはならないから面倒だ。 「自己紹介とかしましたっけ?」  何で黒瀬君が僕の名前を知っているのだろうと考えていたら、思わず声に出してしまった。僕の心の声の予定だったのに。 「テメェらは自分で考えてるよりずっと有名なんだよ。絢斗が妙な言いがかりでもつけられたらたまったモンじゃねぇ」  あぁ、そうか。朔夜が有名だからか。隣にいる僕も必然的に有名になっちゃうっていうアレか。  朔夜と仲良さげな転入生の社君が親衛隊から嫌がらせを、という王道展開を黒瀬君は危惧しているらしい。ただ、君が言えたことじゃないと思うんだけどな。 「黒瀬が言えたことではないだろう。お前は悪い意味で有名だからな」 「……刺すぞテメェ」  なにそれ危ない。  本格的に殺人を仄めかしている黒瀬君を、朔夜は気にも留めていない。完璧に僕の考えを代弁してくれた。 「アキ、言いがかりって何のことだよ? 俺なら大丈夫。自分の身くらい自分で守れるし、この学園で沢山友達作りたいし。湊や朔夜ともっと仲良くなりてーもん!」  
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2435人が本棚に入れています
本棚に追加