第一章

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   朔夜に関してはいつものことなので動じない。ただ、そのいつもよりは倍近い量の悲鳴が食堂に響き渡ったことに驚きを隠せない。黒瀬君は朔夜並みに生徒達の心を掌握しているというわけか。 「ちょっ、何で藍染院様と黒瀬様がご一緒に!?」 「分かんないよ! でも生きてて良かった!」 「眼福過ぎて目から鮪出た!」  最後何があった。  ざわめき出す大食堂。振り返ると、社君が耳を塞いで踞っていた。 「大丈夫ですか?」 「あ、うん。何と言うか……凄いのな」  地響きが、と社君は足場を確かめている。初めてなら当たり前の反応。もう慣れたけど。それに王道っぽいじゃないか。王道的に考えると割とおいしい展開である。 「ほら、行きますよ」 「あんがと!」  頬を紅潮させながら差し出された僕の手を取る社君は、まさに総受けキャラに相応しい無邪気加減。早く来い会長。そんで早く惚れてちゅーしろ。  僕と社君と並んで足を踏み入れた途端、あれほど盛り上がっていた大食堂は水を打ったように静まり返ってしまった。  これまた王道。もうヤバい。何がヤバいって色々とヤバい。自分でも何がヤバいのか分からないくらいヤバい。動悸が止まらない。これは興奮で間違いない。  
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