第一章

31/49
前へ
/220ページ
次へ
  「何あれ? 人? どうして一条様と一緒なんだろう……」 「辛うじて人だな。辛うじて」 「醜いを通り越した時って何て言えばいいんだろう。とりあえず惨めだね」 「あれ、噂の転校生らしいよ? 噂と全然違うけど」 「天使が転入して来るって聞いたから楽しみにしてたのに。期待外れもいいとこだな」  ひそひそと囁くような会話だが、一斉にひそひそやり始めるものだからあまり意味がない。筒抜けですよ諸君。可愛いから許す。と言うより朔夜だけじゃなくて風紀委員には基本的に様付けなんだ。まぁ、風紀はおっかない連中の集まりだから仕方ないか。 「黒瀬君、どうか暴れるのは堪えて下さい」 「あ゛ぁ? テメェ、今の聞いてなかったわけじゃねぇだろうが」 「ここであなたが社君を庇うような真似をすれば、余計に社君へ非難が集中します。自身の影響力を考えて下さい。社君とは寮に戻ってから好きなだけイチャイチャすれば良いでしょう。だから、ここは我慢です」 「なっ! テメっ、」  見事黒瀬君を宥めることに成功。顔真っ赤にしちゃって本当に可愛いなこの人。実は受けなんじゃないの。  非難を主成分とする囁きは、僕達四人が席に着いてから少しだけボリュームが上がった。黒瀬君は青筋を立てて拳を握り締めているが、当の社君はこの非難が自分に向けられた物であるということを理解していないらしい。陽気に鼻歌なんて口ずさみながら、メニューを捲るのに夢中である。ランチとディナーではメニューが違うから仕方ないか。  
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2436人が本棚に入れています
本棚に追加