第一章

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  「……予想を遥かに上回るな。社には常に注意を払っておかなければ危険か」  「近付くな」「気持ち悪い」「死ねばいいのに」といったような罵詈雑言が主を占め始めた囁き声に、朔夜は食堂内を見渡した後、眉間を押さえながら首を回している。お疲れのようだ。これから起こると予想される面倒事の数々を思い、一気に疲れが押し寄せたと見える。  諦めろ。王道とはそういう物である。荊の道だ。同時に薔薇色の道だ。 「黒瀬君、我慢我慢」 「わあってるよっ! るっせぇな!」 「俺この《スペシャルオムライスセット~デミグラスが運ぶ秋の香り~》にする!」 「社、まだ葉桜でもないというのに季節を先取りし過ぎだ」  ……思ったより深刻ではなさそうだな。  相変わらずスペシャルが大好きな社君は、ウェイターさんに注文する時も「スペシャルね、スペシャル」と念を押していた。朔夜は若鶏の唐揚げ定食(料理名は長過ぎるので割愛)で黒瀬君はカツカレー(料理名は以下略)、僕は鯖の味噌煮定食(料理以下略)をそれぞれ注文した。そして僕は黒瀬君のチョイスに悶えました。カツカレーて。挙動がいちいち下手な受けの子より余程可愛い。もうこの際黒瀬君総受けでいいんじゃないの。  
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