第一章

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   ひきつりかけた口元を意識して抑えつつ、社君に目をやる。濃厚な秋の香りが漂うオムライスをちまちまつついている彼にとって、周囲の状況はあまり重要ではないらしい。小さな顔の大半を占める眼鏡で表情はよく分からないが、常に綻んでいる口許とオーラを総合して考えると多分幸せに浸っているのだろう。  入口に視線を戻す。  入口の周囲だけぽっかりと穴が開いている。穴の中心で、白い肌によく似合うハニーブラウンが跳ねていた。何か見覚えあるんですけどあれ。手振ってるし。  小動物的副会長が従えるは、この学園でトップに君臨する生徒会の面々。生徒会生徒会って言ったって所詮は生徒会でしょ、と思ったそこのあなた。あなたはすぐにその考えを悔い改めることになると予め断言しておく。  いやはや、思考回路が王道を基準に構成されている僕も、少しだけ驚いた。まさかここまでだったとは。もうこの学園の生徒だけで芸能プロダクション立ち上げちゃえばいいのに。むしろ僕が立ち上げたい。お金のにほひが立ち込めていやがるぜ。  初めてお目にかかる生徒会ご一行は、先程のギャアアアアアアアに十分値する美形集団だった。期待通り。昨年はただ美形の集団でしかなかったので少々心配だが、とりあえず南副会長が(僕まで巻き込まれるハメになったのは非常に遺憾だが)フラグを立ててくれたので一先ずは安心か。  
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