第一章

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  「……はらへった」  わんこもちゃんといました。僕はもう胸が一杯です。生きてて良かった。日本男児で良かった。  こちらも説明は不要か。わんこは無口で長身で黒髪で力持ちで甘えたがりと相場が決まっているわけですよ。会長様(仮)や朔夜、黒瀬君よりも高い身長に、何と言うかこうくしゅくしゅした感じの長めの黒髪。伏し目がちの垂れ目から覗く双眸は藍色寄りの黒。ブレザーの下にはベージュのカーディガンを羽織っていて、はらへったと零した口に手を当てて欠伸を噛み殺していた。  ファーストインプレッションはとにかく眠たそう。もうね、早く社君と接触させたい。じゃれあって貰いたい。ムービー撮りたい。 「頬を紅潮させるのは結構だが無表情は止めろ。気色が悪い」 「黙りなさい」 「……何だぁ? あの愉快な連中はよ」  朔夜は喧しい。興奮するなって方が土台無理な話である。そして黒瀬君。彼らは生徒会に決まっているでしょうが。頭を使え。 「あやとー! みなとー!」  両手をブンブン振り回しながらダッシュしてくる副会長に、社君は手を止めてキョロキョロしている。副会長を視界に認めたのか、更に顔を輝かせて「悠歩!」と声を上げていた。  
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