第一章

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   抱き着かれている為呼吸も満足にさせて貰えなかった社君は必死に副会長の腕をタップしているのだが、副会長は満面の笑みで抱き着いたまま離れようとしない。社君のSOSサインに気付いていないらしかった。  ちなみに僕が副会長のことを先輩と呼ぶのは、悠歩と呼んでくれと迫る副会長に精一杯の譲歩として先輩と呼ぶことを提案した所、渋々許容された為だ。当たり前だろ。副会長を呼び捨てとか報復が怖くてガクブルしちゃいます。 「あー、あやとごめん」 「うぎゅー……」 「ふん、今度は随分と変わった毛並みの猫がお気に入りのようだな。もう一匹は血統書付きのようだが。何だこの白くて小さい二匹は」  カツ、と。副会長と社君のあれこれを見て再び騒ぎ出した外野が、会長(仮)が話し始めた途端に静まり返った。じろり、と僕と社君に一瞥をくれた会長(仮)だったが、その直後には王道会長様らしい見下したような乾いた笑い声を漏らしていた。  何だそのぞんざいな表現。文句あっかこの野郎。あんた見てると言い難いけど小さくはないわ。日本人男性の平均身長ジャストミートですからっ! 以上心の声でした。 「けほ、けほ、なぁ悠歩。コイツ誰?」  漸く復活した社君が未だ抱き着いている副会長に尋ねていた。相変わらず副会長はニコニコしている。  
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