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「皆さん、水を差すような真似をしてしまい申し訳ありません。どうぞごゆっくり、優雅な晩餐の時をお楽しみ下さい」
左手で固まっている社君を引き摺り、朔夜や黒瀬君と並んでさっさと食堂を後にするとしよう。早いとこずらかるぞ。これ以上は僕が無理だ。
「おい貴様、待──」
「触らないで下さい」
引き留めようとしたのか、伸ばされた会長の腕を振り払う。ごめん会長、会長を労るだけの余裕が今の僕には無いのだよ。そのまま歩みを進めれば会長の声が僕達を呼び止めたが、華麗にスルーした。だって怖いもん。
「湊、みなとっ!」
食堂を出た途端、硬直が解けたらしい社君が僕に掴まれている腕をぶんぶん振り回してきた。落ち着け。何だ、どうした。
「お前っ、あんなこと言って大丈夫なのか!?」
「まぁ、大丈夫と言えば嘘になりますが」
「じゃあ何で!」
「仕方ないでしょう。あのままでは社君の貞操が危なかったですし、明日から僕達を待ち受けるであろう嫌がらせが社君に集中してしまいます」
「じゃあ、俺の為に……」
急に沈んでしまった社君。ちょいと君、君。何を勘違いしているんだ。
「勘違いしないで下さい。社君に嫌がらせが集中するより僕と社君に分散した方が個々の被害は軽くて済みますし、僕は風紀ですからいざというとき便利です。最善の選択があれだっただけですから、社君が気に病むことはありませんよ」
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