第零章

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   王道が好きだ。  王道が何故王道なのかと問われたら、それは多くの人々が王道を愛し、王道を崇め奉ったからに他ならないと容易に回答することが出来る。王道が王道たり得るその最大の理由は、王道に秘められた清廉ながらどこか危ない雰囲気を醸し出す噎せ返るほどの魅力だろう。魅力があるから大衆(世の腐った方々)がそのジャンルを興し、腐人界のパイオニア達がその礎を築いていったのだ。  つまり何が言いたいかと言うとですね。王道万歳! 王道があればご飯がいくらでも進みます! 王道のお陰で彼女が出来て第一志望にも合格出来ました! 凄いぞ王道!  ……少し落ち着いた。腐男子の中では比較的アグレッシブな部類に入ると自負している僕には、朔夜に続いて走りながらでも自分の好みについて語れるだけの強靭な体力と精神力が備わっている。妄想の賜物である。 「……中から物音が聞こえる。当たりだったらしいな」  銀のハーフフレームの眼鏡。僕からすれば朔夜に残された唯一の美点と言っても過言ではない眼鏡というキャラクター。もうね。眼鏡キャラって本体より眼鏡が大切よねって話。むしろ本体が眼鏡よねって話。朔夜みたいな美形が流し目で眼鏡の端から睨んだりしたら、きっとこの学園の生徒の五分の一は救急車で搬送される事態に陥ること請け合いである。良かったね。クールな眼鏡って主役級ではないにしても、絶対に一人は必要なポジションではあるから。  
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