第二章

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   昨年の遠足兼オリエンテーションは山登りだったので、あまりに面倒だった僕は森泉先生を出し抜いてまんまと欠席してやったわけだ。寮でのんびりと趣味に時間を費やした。いやぁ、実に有意義な時間だったね。山に登るよりは余程。  そのことが祟って、今年は流石に休むわけにはいかないっぽい。先生にも目をつけられてしまったらしい。サファリパークなら山登りよりは楽しそうだし、何より今年は社君がいるから参加するのもやぶさかではない。生徒会と(僕が迷惑を被らない程度に)仲良くなって頂ければ、これ程おいしいことはない。 「一条君、今年はちゃんと参加するのですよ? 分かりましたね?」 「約束します。今年は少し事情が違いますから」 「まっ、まさか一条君がそんなにあっさり……! 一条君も一年ですっかり大人になって……先生は嬉しいのですよ。涙出てきたのです……」  何か涙ぐんでる。先生の中で僕の印象どうなってんだ  あ、こら、そこの男子。先生相手に欲情するんじゃありません。 「さて、遠足のお話はこのくらいにして。皆さんお待ちかね、一限目の古典は古文単語の小テストを作って来たのですよ! 喜ぶのです!」  途端に沸き上がるブーイング。嗚呼、今日もⅡーBは平和である。    ★ ★ ★  一面を青々とした芝が覆い尽くし、咲き乱れる色とりどりの花々は陽光を少しでも多く浴びようと、競い合うようにその花弁を誇らしげに揺らしている。そう、花園もとい屋上である。  
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