第二章

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   手入れの行き届いた温室ってこんな感じなのかな。温室に芝ってあったかしらと右上に視線をやる。思い当たる記憶は無いが、細かいことは気にしない。とりあえず、屋上にカテゴライズするのはちょっと憚られる憩の場である。社君が言う所の太古の魔法のカードがあれば、こんな素敵空間も占領出来るわけだ。風紀の力すげー。 「みなとー、俺のタマゴサンドとその焼そばパン交換しようぜ!」 「明らかな不等取引。考えるまでもなく却下です」 「一条、テメェ絢斗の頼み断ってんじゃねぇぞ。うだうだ言わずにその焼そばパン寄越せコラ」 「では、僕が社君から頂くタマゴサンドと黒瀬君の唐揚げ二つを交換しましょう」 「あん? 誰がテメェなんかに大切な唐揚げを二つも……」 「……社君の食べ掛け、なんですよね。このタマゴサンド」 「……仕方ねぇな」 「お前ら、楽しそうだな」  何だよ、朔夜も混ざりたいならそう言えばいいのに。  ランチタイムとは、日常における萌えの大部分が集約される魅惑の一時である。幸せそうに焼そばパンを頬張る社君は可愛いし、唐揚げ二個と引き換えに得たタマゴサンドを直視出来ず、頬を赤らめて後頭部を掻いている黒瀬君も可愛い。が、しかめっ面を貫く朔夜は可愛くない。ちっとも萌えない。  
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