第二章

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   基本的に、僕は同じ過ちを繰り返すのをよく思わない性分である。と言うのもどうやら僕は人より面倒くさがりであるらしく、要領がいいと言えば聞こえは良いのだが、何事に対しても反復することをあまり好まない。  丁度昨日のことだ。  昨日はここの鍵を掛け忘れてしまい、ランチタイムも満足には確保出来なかった。その分二人と多少なりともお近づきになれたので結局プラマイゼロだったが、ランチタイムの教訓を生かして今日はばっちり扉をロックしておいたはずなのに。またランチタイムを逃すハメになるのか。  いやいや、もしかしたら僕が感じているランチタイムの危機は全くの杞憂で、社君に惚れた生徒がわざわざ職員室まで鍵もといカードを取りに行って遥々会いに来たという可能性も無いわけではない。そうだよきっと。OKだよきっと。 「あははー、よかったら僕達も混ぜて欲しいなぁ、なんてぇ」  ゾクゾクッ!  首筋に毛虫が引っ掛かったかのような悪寒が背筋を舐め上げ、いよいよ僕は声のした方へ振り返るのが億劫になった。  知ってる。僕はこの声を知ってる。最初から知ってた。でも声と喋り方がそっくりな別の誰かであって欲しかった。  アクションを起こすにしても社君が一人の所を狙ってくると思ったのに、まさかこんなに堂々と接触を図るなんて。迂闊だった。  
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