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ギギギ、とまるで何年も潤滑油を注されていないブリキ人形のように、不自然なほど緩慢な動作で首を回す。ちなみに今の心境は歓喜と焦燥が半々。歓喜は社君が予定通り王道を突っ走ってくれていることに対してで、焦燥はどうやらまたしてもランチタイムが失われてしまう気色が濃厚であることに対してである。
朔夜は眉間にキツく皺を寄せていて、黒瀬君は声の主を睨み付けている。恐らく事の発端であると思われる社君は、僕と交換して得た焼きそばパンを幸せそうに頬張っていて、まるで気付いていないようだった。どんだけ大物だよ。
「あれぇ? もしかして僕達って歓迎されてない感じぃ?」
もしかしなくてもそうですよ。さて、めちゃくちゃ面倒なことになりました。流石社君、王道イベントはどんなに面倒だろうと外してくれない。
漸く振り返った先には、ぱっと見で何かの団体だと分かる数の生徒達が整列していた。そしてその集団の統率者である生徒が一人、彼らの前で腕組みをして仁王立ちしている。無邪気な嘲笑を湛えた、金色の髪をした可愛らしい生徒である。しかしこの生徒、ヒエラルキーのトップに会長を据え、それ以外の人間は皆底辺くらいにしか思っていないなかなか過激な思想の持ち主でもあるのだ。
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