第二章

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   うん、大丈夫だから少し落ち着きたまえ。眼鏡がずり落ちそうだ。  咄嗟に社君の腕を引き、社君の代わりに顔面で雨宮親衛隊長の拳を受ける形になった。よく考えたら社君の腕を引くだけで良かったのだが、社君に怪我なんてさせた日には黒瀬君が黙ってはいないだろうから安全策を取った。社君を庇う形で前に立ち塞がったら、当たり前だけど拳が顔面に来ちゃいました、みたいな。だっせぇな。ちょっとよろけちゃったし。 「……あまり人を殴った経験はないみいですね」  僕を殴った拳を震わせている雨宮親衛隊長を見て確信した。この人、多分慣れない感触にめちゃくちゃ戸惑ってるわ。可愛いなおい。でも暴力はいかんよ。 「社君の言葉に腹が立ったのは、それが図星で否定出来なかったからでしょう」  あ、口許がちょっと切れてるっぽい。鉄の味がお口中に広がったわ。  ……どうしよう。勢いで拳受けちゃったけど、とりあえず社君に代わって某科学と魔術が交差するアニメの幻想殺し風に説教してみるか? それはちょっとハードルが高過ぎるかな。  ちらと後方を確認しても、社君は固まっている為そのままにしておく。泣きそうな雨宮親衛隊長を見据え、未だに僕の頬の辺りで震えている手をそっと退かした。  
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