第二章

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   親衛隊に所属していなければ個人としてモーションをかけられるが、親衛隊に所属した瞬間その権利は剥奪されるわけだし。一定の距離を得る代償に、その距離がそれ以上縮まることはなくなる。何で皆して自分の首を絞めるのかね。僕には分からん。 「会長に近寄る人をいちいち排除したりしなくても、あなたほど魅力的な人間なら親衛隊なんかに頼らずに会長を振り向かせることだって出来るはずです。その方がずっと進展を望めるし、ずっと可能性が──」 「やめてよっ!」  まだ少ししか話してないのに。  僕に掴まれていた腕を振りほどいて睨み付けてくる雨宮親衛隊長の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。繰り返すようだけど可愛い。受けの子の反抗的な目って嗜虐心を擽られるというか、とりあえず会長とか朔夜辺りと絡ませたい。 「君といい社絢斗といい、何も知らないクセに分かったようなこと言わないで! 僕だってそのくらい分かってるよ。でも、僕は会長を陰から見守っていられるだけで十分だから……」 「それは違います。あなたの言動は矛盾している。本当に満足しているなら、あなたがわざわざこんなことをする必要はどこにもありません。──親衛隊に託つけて、自身の臆病から目を背けるのはやめなさい」     地の文のせいでふざけているように見られても仕方ないが、僕は今割と真剣だ。何かこう、そういうテンションが上がってきた。  雨宮親衛隊長は泣きそうな顔を一層歪めて、親の敵でも見るような形相である。こわいこわい。ちょっと言い過ぎたのかもしれない。反省します。  
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